分配と競りで2度楽しめるカードゲーム『ビブリオス』
今回紹介するのはカードゲーム『ビブリオス』。前半でカードを仕込み後半で競りをする作品で、2人から4人で遊べます。
プレイヤーは修道院長となり、僧院の蔵書の内容を競い合います。2フェイズに分けて書物に関するカードを獲得していき、ゲーム終了時にもっとも多くの勝利点を稼いだプレイヤーの勝利です。
"写字室ボード"の指定位置に3の目を上にしてダイスを配置し、カードの束から規定枚数のカードを取り除いてから裏向きの山札にしたら準備完了です。
ゲームは2つのフェイズで構成されており、"寄進フェイズ""競りフェイズ"の順番でプレイします。
まず"寄進フェイズ"では、手番プレイヤーは参加者数より1枚多い枚数のカードを山札から引いて分配します。分配の方法は、自分用のカードが1枚、他の参加者用のカードが1人につき1枚、そして競り用のカードが1枚です。つまり、総参加者数が3人だった場合は、自分用が1枚、他の参加者用が2枚、競り用が1枚の計4枚になります。
規定枚数を分配し終えたら、"共通の場"のカードを他のプレイヤーが1枚ずつ獲得したのち、次のプレイヤーに手番が移って再度カードを分配します。各プレイヤーが獲得したカードは手札になります。これを山札のカードがなくなるまで繰り返します。
ポイントは、カードの分配方法です。手番プレイヤーはカードを見てから分配できるのですが、分配するカードは一度にすべて引くのではなく、1枚引くたびに分配先を決めます。ですので、最初に引いたカードがそこそこよかったので自分用に分配したら、後で引いたカードがもっといいものだったので、しまったと思いつつ"共通の場"に置かざるを得なかった、などということになります。
また、"共通の場"のカードだけは表向きに置かれることも重要です。"寄進フェイズ"で他のプレイヤーが何のカードを獲得したかを知ることができる機会は、"共通の場"からカードをもっていく際のみだからです。
山札のカードをすべて分配し終えたら、"寄進フェイズ"を終了して"競りフェイズ"を開始します。"競りフェイズ"では、"寄進フェイズ"で競り用に分配されたカードを、同じく"寄進フェイズ"で獲得した手札で競り落としておきます。
ではどのようなカードを分配したり競り落としたりするのかといいますと、大きく分けて、蔵書の価値を決める"分野カード"、競りの際に使用する"金カード"、特殊な働きをする"教会カード"の3種類です。
"分野カード"は、"写字室ボード"に置かれたダイスと同じ5種類が用意されています。それぞれのカードには1から4の価値が書かれており、ゲーム終了時に獲得したカードを種類別に分けて価値を合計し、もっとも多くの価値を獲得したプレイヤーが、その種類のダイスを入手します。
一方"金カード"には、1から3の額が書かれています。これは"競りフェイズ"で落札したカードの代金を支払う際に使用します。
"競りフェイズ"では、"寄進フェイズ"で競りに回されたカードがシャッフルされたのち、1枚ずつ競りにかけられていきます。プレイヤーは順番に、すでに宣言された額よりも1多い額で入札するか、パスをするかを行い、最後に残った1人がそのカードを競り落とします。
ポイントは、競りに入札する時点では入札額を宣言するだけでいいことです。つまり、対戦相手が欲しいカードが競りにかけられた場合に、手持ちに金カードがなかったとしても額をつり上げて高く買わせようと試みることができるわけです。
ただし、つり上げに失敗して自分がカードを買う羽目になった際に、手持ちの金カードで支払うことができないとペナルティーを受けますので、注意が必要です。
このようにして狙った種類のカードを落としていくのですが、ゲームが進んでいくにつれて、手札には勝ち目がなくなったなどという理由で必要がない"分野カード"が生まれてきます。本ゲームはこれらのカードも再利用可能です。
なぜなら、"競りフェイズ"で競りにかけられるのは、"分野カード"だけではなく"金カード"もあるからです。"金カード"を競り落とした際は支払いのルールが異なり、支払いは"金カード"限定ではなく何のカードでもいいのです。具体的には、競り落とした額と同じ枚数のカードを手札から裏向きのまま支払います。
ダイスやカードは全部で5種類ありますが、すべての種類で1位にならなくても勝機はあります。参加者数によりますが、5種類すべてで1位になろうとしますと逆にどれにも手が届かない可能性が高いです。ですので、"競りフェイズ"では勝てない種類のカードを早めに見極めて、"金カード"に変えていくことになります。
そして、ゲーム全体の流れを決めていくのが"教会カード"です。このカードは、"寄進フェイズ"で誰かの手札になった際もしくは、"競りフェイズ"で落札された際に、即座に使用されます。
"教会カード"にはプラス1やマイナス1という数字と、1つか2つのダイスの絵が描かれています。"教会カード"を使用したプレイヤーは、カードに描かれているダイスの数だけ、"写字室ボード"上にあるダイスの目をプラス1もしくはマイナス1することができるのです。
"教会カード"でダイスの目を変えるということは、2つの意味をもっています。ダイスの目が変わりますとそのダイスから得られる勝利点も変わりますので、通常は自分が狙っているダイスの目を増やし、狙っていないダイスの目を減らします。しかしそうしますと、対戦相手にどのダイスを狙っているのかいないのかがバレやすいというリスクが生まれるのです。
その結果、特定のダイスを狙っているのが1人だけだとバレますと、みなの集中攻撃をくらって目がどんどん下げられてしまうことになりかねませんので、ある程度ブラフをかけることも必要になるでしょう。
反対に1種類のダイスを2人以上で狙っていた場合は、ダイス目が減らされる可能性は減り、逆に増える場合が多くなりますので安全になります。もちろん、そのダイスを獲得するにはライバルに勝つ必要が出てくるのですが。
本ゲームは、自分が何を狙っているのかを知られないようにしつつ、対戦相手の狙いを推測しながら、徐々に手札をそろえていく作品です。ですので、誰がどのカードを入手したかを記憶したり、自分が見たカードから残りのカードを推測することが重要になります。といっても、ゲーム開始時に何枚かのカードが除外されますので、推測が的中するかはある程度運に左右されるところが、思わぬ展開を呼ぶこともあります。
このように派手な展開にはなりにくい作品ですが、前半で少しずつ手札を固めてから後半の競りで手札を整えるのは、なかなかアタマを使います。といってもカードゲームですので、重いわけではありません。適度にじっくりと駆け引きを楽しみたい人にオススメです。
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●URL
ビブリオス:中世の写本師(日本語版発売元ホビージャパンのページ)
http://hobbyjapan.co.jp/biblios/
(橋本 崇史)