カードゲーム『お好きにどーぞ』:拡大再生産+妨害+負け決め=食い合わせ悪い?
"ゲームマーケット公認レポーター"のレポート2回目として紹介するのは、カードゲーム『お好きにどーぞ』。自分の会社を大きくしたり他社を妨害したりして最下位を決める軽量級の作品で、3人から4人で遊べます。今回は3人で遊び、各メンバーの評価は5点満点で3点が1人、1点が2人でした。
プレイヤーは神となり、その力を使って会社を大きくしていきます。オークションで競り落としたカードを使用して、自分の会社を大きくしたり他人の会社運営を妨害したりします。ゲーム終了時に、もっとも得点が低いプレイヤーの負けです。
本ゲームの特徴は、コストを払って徐々に自分の場を成長させていくというゲームには珍しく、会社をもっとも大きくした勝者を決めるのではなく、会社を大きくできなかった敗者を決めることです。
手番がきたプレイヤーは順番に、神力(かみぢから)オークション、アクション、企業発展の3つの行動を行います。カードをオークションで競り落として手札に加え、手札や場札のカードをアクションとして使用し、条件が整ったら自分の会社を大きくする、というのが手番の流れです。
オークションは、山札からめくられたカードに対して、手番プレイヤーから値を付けていき、最高値をつけたプレイヤーが同額の神力を支払って落札します。ただし、めくられたカードが必要ない場合は、オークションの最初にパスをすれば神力を1増やせます。なお、その回のオークションで1度でも値を付けてしまった場合は、その後落札できなくても神力は増やせません。また競り落としたカードは手札になります。
続いてアクションフェイズで、手札などを使用します。カードによって効果が発揮されるタイミングが異なりますので注意しましょう。個人的には、場に出されたときに効果が発揮するカードと、場に出されたあと自分のターンに効果を発揮できるカードを混同しやすかったです。
カードには、2つの能力が備わっています。一つはカード下段に文章で書かれている能力で、カードをつけられたプレイヤーの神力を増減させるものや、他人の場のカードを奪うものなどが用意されています。もう一つは、カード右上に書かれている企業力という数値です。ゲーム終了時にこの企業力と神力を合計した値がもっとも少ないプレイヤーが負けますので、この数字の大小を競うことになります。
そして自分のターンの最後に企業力が一定の数値に達していた場合は、企業を発展させることができます。また企業力が一定の数値に満たない場合でも、神力をその差分だけ支払うことができれば発展が可能です。
ポイントは、企業を発展させるとさまざまなメリットがあることです。まず、アクションの回数などが増加します。スタート時のアクション回数は1回、オークションでめくることのできるカードの枚数は1枚なのですが、1段階発展するとそれぞれ2になり最終的には3回と3枚まで増加するのです。
さらに大きいのが、自分の手番がくるたびに神力が自動で増加するようになることです。神力はオークションでパスをすることで増やす場合が多いのですが、これが自動で増えるようになるとやりくりがかなり楽になります。
加えて、企業自体にも企業力が備わっており、その値はスタート時の5から10、15と飛躍的に延びていきますので、得点争いという意味でも発展は重要になるのです。
本ゲームは、とても意欲的な作品だといえます。コストを払って徐々に自分の場を成長させていくという拡大再生産系のゲームであるにも関わらず、目的が最下位を決めるという作品は初めて遊びました。さらに、最下位を決めるゲームであるにも関わらず、任意の相手に直接マイナスの効果を与えるカードが多く用意されていることや、カードを獲得するためにオークションが導入されていることも新鮮でした。
ただし、これらの意欲的な挑戦がうまくかみ合っているのかといいますと、そのようには感じませんでした。特に、序盤でほかのプレイヤーからマイナスのカードをつけられて凹んだプレイヤーが、そのまま浮上することなく終了するという展開になる可能性が高いと考えられます。
まず、ベースとなるシステムの拡大再生産ですが、本ゲームの場合、自分に使用することでゲーム的に有利になるカードが、最終的な勝敗を決める得点も高い傾向にあります。ですので、自分にカードを使えば使うほど盤石となるので、逆転が起こりにくくなります。
さらに、使用されるとゲーム的に不利になるカードには得点がマイナスになる能力も付いてくる場合が多いですので、つけられると弱り目に祟り目です。
得点が下がるというのは、本ゲームでは致命的です。得点の大小はゲーム終了時の勝敗にも関わりますが、会社を発展させるためにも一定数の得点が必要で、かつ、会社を発展させることができないと大幅に出遅れるからです。
では出遅れたプレイヤーに救済策はあるのかといいますと、用意されていないように感じます。本ゲームのもう一つの柱であるオークションにしても、先に有利になったプレイヤーが優先的に落札していくので、出遅れたプレイヤーとの差はひらく一方です。
加えて最下位を決めるゲームですので、いったん優位に立つとほどほどに進めていけばよく、上位プレイヤーがオークションで競り合ってつぶし合う、という展開も生まれにくいのです。そうするよりも、半ば協力して最下位を凹ませ続ければいいだけなのですから。
かつ、手軽で先の見通しのいいという特徴が逆に災いして、序盤で勝敗が決してしまう場合が多いはずです。筆者が遊んだ際も、序盤で最下位が確定した結果、上位2名は途中で目標を失ったあげく、目的をどちらの得点が高くなるかに変更しました。
このように現状ではシステムがかみ合っていない感じがする本ゲームですが、コンセプトとしては魅力的ですので、なんとかかみ合うようにしたいところです。ぱっと思いついたところでは、ゲームの目的をトップを決めることに変更するのが、もっとも手っ取り早そうです。加えて、有利な人がどんどん有利になるシステムにも手を入れる必要があるでしょう。
ゲームの目的を変更しないのであればシステムを変えなければなりませんが、妨害ありの拡大再生産で最下位を決める作品をゲームとしてうまくかみ合わせるのは、なかなか厳しそうな感じがします。ただし、テーマとしては興味深いので、作者のチャレンジに期待したいところです。
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(橋本 崇史)