善と悪のチームで競い合うトリックテイキング『ホビットの冒険 カードゲーム』
今回紹介するのはカードゲーム『ホビットの冒険 カードゲーム』。J・R・R・トールキンのファンタジー小説をテーマにしたチーム戦の作品で、2人から5人で遊べますが、標準ルールは3人以上向けです。
プレイヤーは、善の陣営と悪の陣営に分かれて、相手側の陣営を負かすために争います。善側は魔法使いガンダルフやホビットのビルボたち、悪側はドラゴンのスマウグなど。ゲームが進むにつれてプレイヤーは脱落していき、2ラウンド以内に勝利条件を満たした陣営の勝利です。
本ゲームはトリックテイキングと呼ばれるゲームです。トリックテイキングとはトランプゲームの『ブリッジ』や『ハーツ』、『ナポレオン』などで使用されているシステムのことで、各プレイヤーが手札からカードを1枚出していき、もっとも強いカード(大抵はもっとも大きな数字のカード)を出したプレイヤーがカードをすべて獲得します。この1周のことをトリックといい、強いカードを出してカードを獲得することをトリックをとる、などといいます。
トリックテイキングにはもう2つ特徴があります。まず、トリックの最初に出されたカードと同じ種類のカードが手札にあった場合は、その種類のカードを必ず出さなければなりません。たとえば最初に出されたカードがクラブの8だったら、2番手以降のプレイヤーもクラブのカードをもっていたら必ず出していきます。このことをマストフォローと呼びます。
もし、上記の場合にクラブのカードをもっていなかった場合はなにを出してもいいのですが、その場合は単にカードを捨てるだけなので強いカードを出してもそのトリックに勝つことはできません。たとえば、最初にクラブの8が出たトリックでハートの13を出したとしても勝てないのです。
ただし例外があります。出した種類のカードが切札だったら、最初に出された種類と異なっても勝つことができるのです。切札は最初に出された種類よりも常に強いので、そのトリックの勝者はもっとも強い切札を出したプレイヤーとなります。たとえば、最初にクラブの8が出たトリックで切札のスペードの4が出た場合、数字としては小さくてもスペードのほうが強いのです。なお、どの種類のカードが切札になるかはゲームによって変わります。
本ゲームは、マストフォローと切札があるトリックテイキングです。プレイに使用するカードは赤・黄・青・緑・紫の5種類で、各色12枚ずつ弱い1から最強の12まで用意されています。そして、紫のカードは常に切札となります。
特徴的なのは、チーム戦だということです。プレイヤーはゲーム開始時に、ランダムでキャラクターカードを受け取って、表向きにして自分の前に置きます。これによって、自分が善悪どちらの陣営かはっきりするほか、それぞれのキャラクター別の能力も明らかになります。
もう1つの特徴は、プレイヤーが脱落していくということです。トリックの勝者は、自分のキャラクターの能力に従い、そのトリックで使用されたカードを各キャラクターに分配していくのですが、この分配がキモとなります。
プレイに使用するカードには、色と数字の他に3種類のシンボルが描かれています。各プレイヤーが手札を使い切ると1ラウンドが終了し、その時点で敵対する陣営のシンボルが描かれたカードを2枚以上分配されていたキャラクターのプレイヤーは、ゲームから脱落してしまうのです。
このようにしてそれぞれの陣営が協力しながらトリックをとってカードを分配し、最大2ラウンド終了後に善側が全滅するもしくは善側が生き残るなどの条件を満たしたら、どちらかのチームが勝利します。
ポイントは、善側と悪側でバランスが異なっていることです。まず、陣営のプレイヤー数が異なります。3人で遊ぶ場合は善が2人で悪が1人、4人で遊ぶ場合は善が3人で悪が1人という具合に、悪側の人数のほうが少ないのです。
そのかわり、悪側は1人あたりの能力が高くなっています。具体的にはゲームスタート時の手札が異なります。たとえば3人で遊ぶ場合、善側はランダムに配られた9枚の手札でスタートしますが、悪側は12枚のカードから好きなものを9枚選んでスタートできるのです。
なおかつ、プレイするカードのシンボルにも違いがあります。各色12枚あるカードのうち、ある色は善のシンボルが4、悪のシンボルが3含まれているのに対し、別の色では善のシンボルが1、悪のシンボルが9というものもあるのです。トータルでは悪のシンボルのほうが多いため、やはり悪側に有利というわけです。
その結果、強力な悪のドラゴンらに対して善の魔法使いやホビットたちが協力して立ち向かう、という図式になるのです。
そこで重要になるのは、担当するキャラクターによってカードの分配方法が異なることです。たとえばガンダルフの場合は、トリックのカードを1人に1枚好きなように分配できますし、分配したくないカードは捨て札にできます。一方ドワーフのトーリンは、カードをシャッフルした上でランダムにすべて分配しなければなりません。
つまり、単に自分が勝つことだけを考えるのではなく、その回のトリックで出されているカードのシンボルをみて、自分が勝ってもいいのか仲間に勝たせたほうがいいのか、といったことも考慮する必要があるのです。といいましても、手札には限りがありますのでなかなか思うようにはいかなく、そこがまた面白いのですが。
本ゲームは、バランスの偏ったチーム戦というシステムを使うことで、ファンタジー小説『ホビットの冒険』の世界観をうまく表現していることに感心しました。ゲームとしても、トリックテイキングにシンボルと分配という要素を付け加えることで、新たな悩ましさを生み出しています。善悪の陣営を変えることで遊び方も変わりますので、是非両陣営ともで遊んでみてください。
© Sophisticated Games
●URL
ホビットの冒険 カードゲーム日本語版(日本語版発売元のホビージャパンのページ)
http://hobbyjapan.co.jp/hobbit/
(橋本 崇史)