姫と一緒に仲間を集めてイタイケな小鬼たちを救え!ゲームブック『虹河の大冒険』
ゲームブックというものをご存じでしょうか。コンピューターゲームのサウンドノベルのような分岐がある小説のことで、主人公役の読み手の選択によってある程度ストーリーが変化するのが特徴です。作品はナンバリングされた数百のパラグラフに分かれていて、各パラグラフの最後に選択肢と次に読むパラグラフの数字が書かれている形式が一般的です。また多くの作品では、サイコロを利用した戦闘が楽しめます。1980年代半ばにブームがありましたので、ご記憶のあるかたもいるかもしれません。
今回紹介するゲームブックは、『虹河の大冒険』(フーゴ・ハル著 河嶋陶一朗/冒険企画局監修 新紀元社)です。
物語の舞台は、世界が迷宮のようになっている"百万迷宮"。アナタは"百万迷宮"にある〈虹河〉の下流にある小国の国王となり、ドングリ眼がラブリーな子供サイズのモンスターである小鬼たちが大挙して逃げてきた原因を探るため、一粒種である姫をお供に仲間を募りつつ、謎の地図を頼りに〈虹河〉を上る冒険にでかけます。
なお、本書はとぼけた文章に登場人物は二等身キャラと、ほのぼの珍道中な感じで始まりますが、これは罠です。終盤にかけての怒濤の展開に翻弄されませぬよう、ご注意を。
●手間のかかる作業を極力減らした作りなので、ペンと紙は必要なし
本作は、いかに手間をかけずに遊べるかを意識した作りになっています。その中でも特徴的な3点をご紹介しましょう。
●〈虹河〉を上りながら最大20人の仲間やアイテムを集めよう
冒険は、最初国王であるアナタと姫、そしてバナナボートだけで始まりますが、〈虹河〉を上っていくにつれて徐々に仲間やアイテムを増やしていけます。その数、それぞれ二十種類以上。誰を仲間にするかはある程度取捨選択できまして、特定の仲間がいないと先に進めなかったり、仲間の選択によって先の展開が少し変化したりする仕組みです。
仲間やアイテムは、特定のページの上部にそれぞれ名前とイラスト、概要が書かれています。おもしろいのは管理の方法で、仲間やアイテムが加わった場合は、彼・彼女・それが書かれたページの角を折る仕組みです。つまり、仲間やアイテムの管理にペンと紙がいらないわけです。
その結果、読み進めますと本はこんな感じになるわけですが。
●ページ上部の地図を頼りに〈虹河〉を探索しよう
舞台となる〈虹河〉は迷路状になっており、スタート時に手に入る謎の地図を頼りに進んでいきます。したがって、迷宮をくぐり抜けるのにマッピングは必要ではありません。この地図は、イラストと謎の記号と、数字でできています。移動方法は、地図をたどりつつ地図上にある丸付きの数字に当たったらそのパラグラフに飛ぶ仕組みです。
と書きますと〈虹河〉を抜けるのは簡単に思えるかもしれませんが、そうは問屋がおろしません。たとえば、各ページの地図の上流・下流部分の先は次のページにつながるのですが、単純に隣のページに移動するわけではないのです。このつながりがある種のパズルになっています。ですので、いったん上流に移動したあと元のところに戻ろうとしても、必ずしもすんなりと戻れるとは限らないわけです。
他にも、先へ行くにしたがって地形その他に手の込んだ仕掛けが施されていきますので、私のようにさらっと読み飛ばしながら進んでしまうと、思わぬところで詰まってしまいますのでご注意ください。このように、手軽だけどガッチリ遊べるのが本書の特徴です。
●HPを消費して敵を倒そう。ただしカンを働かせれば無傷で突破も
〈虹河〉の危険なところは迷宮状になっているところだけではありません。探索していくうちに、モンスターなどに遭遇して戦闘になることもあります。
本作の戦闘システムは、お手軽です。システムはヒットポイント(以下HP)制なのですが、敵を倒す場合は、一定数のHPを消費すればよいのです。つまり、敵を倒す過程でその分だけ傷ついたことを意味するわけです。
しかし、うまく立ち回って無傷で戦闘を終えるチャンスもあります。戦闘ごとに一定範囲内の数字から一つの数字を推理し、的中すれば一撃で敵を倒せるのです。ちなみに、敵が強いほど数字の範囲内は広くなっていきますので当てるのが難しくなっていくという仕組みです。
このように、戦闘になるとHPが減っていく仕組みですので、戦闘は基本的には避けていくとよいでしょう。ゲームを進めていくと、戦闘の避け方もわかってきますので。といっても冒険に出るような人たち(読者のこと)は、危険だとわかっていてもあえて足を踏み入れていく性分の持ち主だったりするわけで......。
ちなみに、超ヌルいゲーマーである私の場合、戦闘はすべて勝ったことにしてどんどん進みました。この様に、自由に遊び方をカスタマイズできるのも、アナログゲームの特徴です。
●作業は手軽、でもギミックは満載なゲームブック
本書は、電車の中でも読める手軽さと、ボードゲームのような仕掛けの多さを両立させている作品です。というわけで、ゲームブックってなに?というかたはもちろんのこと、メモを取ったり手描きのマッピングするなどの作業は面倒だけど、がっちりゲームがしたいという人にもお勧めです。
ちなみに本書は"ブックゲーム"と銘打たれたシリーズの2作目にあたります。本書と1作目の『モービィ・リップからの脱出』とは、直接的なストーリーのつながりこそないものの、TRPG『迷宮キングダム』をベースにした世界観や基本システムは同じで、ともに遊びやすさを考慮した作りになっています。どちらもオススメなのですが、2作目の本書は1作目を踏まえてより遊びやすく作られていますので、本書から入ることをオススメします。
なお、エラッタがありますので、遊んでいてあれ?と思ったら作者サイトをチェックすると解決するかもしれません。
●URL
GOTO HUGO(作者の公式Webサイト)
(橋本 崇史)