1人用デッキ構築型カードゲーム『ロビンソン漂流記 完全日本語版』
今回紹介するのは、カードゲーム『ロビンソン漂流記 完全日本語版』。1人用のデッキ構築型カードゲームという異色作です。
『ドミニオン』などのデッキ構築型カードゲームには、ゲーム中ほかのプレイヤーと絡む機会が比較的少ない、という特徴があります。その結果、人によってはソロプレイをしている感覚に近いと感じる場合もあるようです。それを逆手にとって、デッキ構築型カードゲームを1人用の作品に仕立てあげたのが本作です。作者は、癖のあるゲームデザインが特徴のフリードマン・フリーゼ氏。
プレイヤーは、孤島で気ままな暮らしをしていた住民フライデーとなり、漂着してきたロビンソンにサバイバル技術を教え込んで島から脱出してもらうのが目的です。
ロビンソンはプレイヤーの指導のもと、島でサバイバル生活をしながら生き延び、経験を積んで成長していきます。そして最後に待ちかまえている海賊船を倒せばゲームは終了で、その時点での得点をどこまでのばせるかを試行錯誤する作品です。
本作は、ロビンソンの能力を表す山札の"ロビンソン・デッキ"と、孤島での災厄を表す"災厄の山札"を中心にゲームを進めていきます。"災厄の山札"からめくられた災厄に対し、ロビンソン・デッキ(以下、デッキ)で立ち向かっていくわけです。
ターンの最初に、災厄の山札から2枚カードをめくってから、どちらの災厄と対峙するかを選択します。カードの右側に書かれている赤・黄・緑の円内の数字は災厄の強さで、左に書かれている白抜きの数字は、災厄と対峙するにあたりプレイヤーがデッキから無償でめくることができるカードの枚数です。
一方、デッキのカードの左上に書かれているのが、ロビンソンの戦闘力です。毎ターン、災厄のカードに記された分だけデッキのカードをめくっていき、その戦闘力の合計が災厄の強さ以上になれば勝利、達しなければ敗北となります。
加えて戦闘の際、戦闘力が災厄の強さに足りない場合は、体力を1つ消費するたびに、カードを1枚追加でデッキからめくることができます。
戦闘に勝利した場合は、災厄のカードはデッキのカードと一緒に、デッキ用の捨て札置き場に置かれます。デッキのカードが尽きた場合は、捨て札のカードを切り直してから再度デッキとして使用します。災厄のカードの下半分には、ロビンソンが災厄を乗り越えたことで得られた能力が書かれており、以降はこちら側をロビンソンの能力として使用できるのです。
戦闘に敗北した場合は、災厄の強さからロビンソンの戦闘力を引いた分だけ体力を失います。
そして重要なのが、この際に失った体力の分だけ、今ターンで使用したロビンソン・デッキのカードをゲームから除外できることです。
カードをゲームから除外すると聞くとデメリットのように思えるかもしれませんが、そうではありません。
ゲーム開始時のデッキのカード18枚は、戦闘力がゼロの"弱気"カードが8枚、戦闘力がマイナス1の"散漫"カードが5枚と、弱いカードが多くを占めています。
これでは、せっかく苦心して災厄に打ち勝ち強いカードを手に入れても、弱いカードを引いてしまう可能性が高いままです。そこで、戦闘に負けることで弱いカードをデッキから除外し、強いカードを引く確率を上げていく仕組みなのです。
つまり、トレーディング・カードゲームやデッキ構築型カードゲームで使われている"圧縮"という手法を、ゲームの肝に取り込んでいるわけです。
ポイントは、どの戦闘で勝ち、どの戦闘で負けたほうがいいのかを見極めることです。序盤のロビンソンは体力が20あるので、毎回2枚めくる災厄のカードを吟味しながら、時には負けることを前提とした戦闘を行う必要があります。
さらにゲームが進んでいくにつれて、ロビンソンは体力と引き替えに経験を積んで強くなっていきますが、同時に過酷な生活のせいで衰弱していくので一筋縄ではいきません。
なおかつ、中盤終盤と進んでいくと災厄も強力になっていきます。
そして最後には海賊船が待ち受けているのです。
はたしてあなたは、ロビンソンをうまく導いて試練をくぐり抜けらせて、島から脱出させることができるでしょうか。
なお本ゲームは、ある程度コツをつかんでクリアできるようになってからが本番です。その後は、クリア時の得点を伸ばしていくもよし、上級者向けのルールを導入してより難易度の高い試練に挑戦するもよしと、やり込みがいのある作りになっているからです。
最初は海賊船に会う前にゲームオーバーになってしまうこともままありますが、何度か遊んでいるうちにカードの内容や体力を削っていくタイミングなどを把握していき、ロビンソンとともに自分も経験を積んでいくのがわかるのが楽しいです。プレイ時間は30分ほどですが、海賊船を倒せずに終わるとつい連続で遊んでしまいます。
本ゲームは、1人用であっても最近のアナログゲームの楽しさを十分味わえますので、がっちりアナログゲームで遊びたいけれども友人との日程が合わなくて、などという場合にそなえて手元に置いておくと重宝しますよ。
© Arclight,Inc.
●URL
ArclightGames(日本語版発売元のページ)
http://www.arclight.co.jp/ag/agbg/agbg.php?code=LG-0069
数々のゲーム賞を受賞したデッキ構築型カードゲームの元祖『ドミニオン』 - ゆるこいぶろぐ
http://yurukoi.impress.co.jp/2012/12/12-dominion.html
(橋本 崇史)