ボードゲーム・エントランス

ボードゲームやカードゲームを中心としたアナログゲームを紹介しています。なお、2016年1月28日以前の記事は、株式会社インプレスが運営していた“ゆるこいぶろぐ”に掲載していた記事を、許諾を得て転載したものです。

5種類の役割と29種類の建物を使いこなすカードゲーム『サンファン』

 今回紹介するのは、カードゲーム『サンファン』。『プエルトリコ』という人気のボードゲームがあるのですが、自由度が高くて勝ちかたが複数あるため、初心者にはハードルが高いベテラン向けの作品になっています。そんな作品を、もう少し手軽なカードゲームへと仕立て直したのが『サンファン』です。2人から4人で遊べます。

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 ゲームの目的は、"生産施設"で商品を作って販売しながら資金を稼ぎ、特殊な効果を備える"紫の建物"を建てながら町を大きくしていくことです。ゲーム終了時にもっとも立派な建物群をそろえたプレイヤーの勝利となります。

 プレイヤーは毎ラウンド、何かの役割を実行します。役割は"建築士""監督""商人""参事会議員""金鉱堀り"の5種類。1回のラウンドで、手番プレイヤーから順番に1つずつ役割を選んでいきます。そのラウンドの最初に役割を選べるプレイヤーを総督とよびます。

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役割タイル

 役割を選んだら、その役割ごとに決まっているアクションと特権を実行していきます。ただし、アクションは全プレイヤーが行えるのですが、特権はその役割を選んだプレイヤーしか行えません。

 たとえば、最初のプレイヤーAが建築士を選んだとしましょう。その場合、Aも含めてほかのプレイヤーも皆、建物を1つ建てるというアクションを実行できます。その上でAは、建物を建てるコストが少し安くなるという特権が得られます。

 皆が建物を建て終わったら、次のプレイヤーBの番になります。Bは、残っている役割、つまり"監督""商人""参事会議員""金鉱堀り"の4つのうちから1つを選んで、同じようにアクションと特権を実行します。このようにしてプレイヤーが1回ずつ役割を選び終えたら、そのラウンドは終了して、選んだ役割はいったんリセットされ、次の手番の人が総督になり5種類の中から好きな役割を選んでいきます。

 役割の中で中心になるのは"建築士""監督""商人"です。監督が選ばれると、すべてのプレイヤーが商品を生産できます。商人が選ばれると、すべてのプレイヤーが商品を売却できます。基本的には、"インディゴ染料工場""サトウ精製所""コーヒー焙煎所"などの生産施設を建てて商品を生産・売却し、稼いだ資金で新しい建物を建てていくという流れです。

 ポイントは、生産施設が5種類あるほかに、特殊な効果を備える"紫の建物"が24種類あることです。

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上の2枚が"生産施設"、下の3枚が"紫の建物"

 どんな効果を備えているかといいますと、たとえば"水道橋"は商品の生産数が1つ増える、"マーケット"は商品売却時に通常より多くの利益を得られる、"図書館"は特権の効果が2倍になる、などなど。"紫の建物"は同じものを建てられませんので効果を重複させることはできませんが、相性のいい建物を組み合わせれば効果は倍増するでしょう。

 このようにして建物を建てていき、誰かが12個目の建物を建てたところでゲーム終了です。建物にそれぞれ記載されている"勝利ポイント"を合計し、もっとも高かったプレイヤーの勝利となります。

 このゲームのもう1つのポイントは、ゲーム内のお金にあたるものが、手札だということです。別途お金としてチップなどを使用するのではなく、手札1枚=1ドルのような処理をすることで、少し複雑なゲームにしてはコンポーネントが少な目で、遊びやすくなっているのです。

 さらに、プレイヤーのできることがある程度絞られている上に、ゲームの目的が明確ですので、どのような建物を建てるかや、建てた建物やほかのプレイヤーの動向にあわせて役割を選んだりするなどの楽しみに、きっちり頭を使っていけるわけです。

 本ゲームは、使用するカードの種類が多かったり、役割という考え方が少し特殊だったりと、最初のプレイでは戸惑いを覚えることもあるかもしれません。ですが、役割という考え方は1度遊べばすんなり頭に入ってきますし、カードの内容も遊びながら実際に使っていけば自ずと把握していけます。上級者向けのゲームに手を出す前の肩慣らしとして、ちょうどいい難易度と奥の深さを備える作品なのではないでしょうか。

●URL

サンファン(日本語版発売元のページ)

http://www.mobius-games.co.jp/alea/SanJuan.htm

(橋本 崇史)