ボードゲーム・エントランス

ボードゲームやカードゲームを中心としたアナログゲームを紹介しています。なお、2016年1月28日以前の記事は、株式会社インプレスが運営していた“ゆるこいぶろぐ”に掲載していた記事を、許諾を得て転載したものです。

太古の支配者の召喚を競い合うボードゲーム『グランオクトパスの夜』

 今回紹介するのはボードゲーム『グランオクトパスの夜』。シンプルながら行動の読み合いが悩ましいシステムと、クトゥルフ神話を彷彿とさせる怪しげなコンポーネントが特徴の作品で、3人から5人で遊べます。

 

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 プレイヤーは太古の支配者"グランオクトパス"を崇めるカルト教団の指導者となり、グランオクトパスの復活を画策します。グランオクトパスを召喚するのに必要なだけの素材を最も早く入手したプレイヤーの勝利です。

 

 本ゲームでまず目に付くのは、派手な色彩で描かれたゲームボードやコマ、トークンです。ゲームボードは英国のとある大学をあらわしており、それぞれの部屋は怪しく描かれています。

 

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 プレイヤーが使うコマの"カルティスト"と"落とし仔"にはシールを貼るのですが、両者とも適度にデフォルメされていて、よく見ると愛嬌があります。

 

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なおシールを貼る前のコマにはどちらが表側かという記号が描かれているのだが、筆者のものは一部裏表が逆だったので注意が必要

 

 そして素材トークンに"銀の鍵""星図""魔導書"らが、特殊地形として"失われし都"や"月星人(ムーンメン)の基地"などが用意されているといった具合で、いかにも怪しげなそれらが箱から出されるだけで場が盛り上がること請け合いです。

 

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 コンポーネントで盛り上がったあと、ルールに従いゲームボードへ素材トークンや"カルティスト"の配置などを行い、プレイヤーに"落とし仔"のコマおよびコマンド・クロックを配ったら準備完了です。

 

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ボードには6つのロケーション(場所)があり、それぞれにプレイヤーの人数より1つ少ない数の素材トークンを置く

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同色の"カルティスト"と"落とし仔"は同じ教団(プレイヤー)に属す

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"カルティスト"コマは皆、図書館からスタート

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値は各教団のカルト・パワーのポイントを表す。ポイントがゼロになった教団(つまりプレイヤー)はゲームから脱落する

 

 ゲームは全プレイヤー同時進行で行われます。プレイヤーが各ターンでできることは1種類のアクション。自分の教団に属する"カルティスト"コマと"落とし仔"コマをどのロケーションに行かせるかを決めるだけです。

 

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コマンド・クロックを使い、どこにコマを行かせるかを密かに決定する。"短剣"で指した番号のロケーション(この場合は4)には"カルティスト"コマを、"触手"で指した番号のロケーション(この場合は6)には"落とし仔"コマを行かせる仕組み。行き先を決めたら裏側にして伏せておく

 

 プレイヤー全員がコマの行き先を決めたら、一斉にコマンド・クロックを表側にして、同時にそれぞれのコマを移動させます。

 

 移動した結果、どこかのロケーションに"カルティスト"コマが1個しかなかった場合は、コマの持ち主はそのロケーションにある素材トークンを1つ手に入れます。これを繰り返して、最も早く素材トークンを4つ手に入れたプレイヤーが、グランオクトパスの召喚に成功して勝利します。

 

 ただし、コマの移動方法には決まりがあります。"カルティスト"コマが移動できるのは、現在コマが置かれているロケーションから直接階段でつながっている場所のみです。または今いるロケーションに止まることもできます。

 

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4の研究所から移動できるのは、階段でつながっている1の図書館と3の霊廟と5の天文台

 

 一方"落とし仔"コマは、自分の"カルティスト"コマと同じロケーションでなければ好きな場所に行かせることができます。

 

 そしてコマを移動した後、1つのロケーションに複数のコマが置かれた場合は、何らかの結果が発生することがあります。

 

 まず、"カルティスト"コマと"落とし仔"コマが同じロケーションに置かれた場合は、ライバル同士の"カルティスト"と"落とし仔"の戦いが起こり、各"カルティスト"コマの持ち主はカルト・パワーを1ポイントずつ失ってしまいます。その上、そのロケーションに素材トークンがあったとしても入手できません。

 

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この場合は、緑と赤のプレイヤーがカルト・パワーを1ポイントずつ失う

 

 ですので"落とし仔"コマの行き先を決める場合は他プレイヤーの"カルティスト"コマが行きそうなところを狙い、"カルティスト"コマを移動させる場合は他プレイヤーの裏をかいた上で、たった一人でロケーションを独占しようとするのが基本となります。

 

 特徴的なのは、あるロケーションに"落とし仔"コマが1つもなく、かつ"カルティスト"コマが複数ある場合です。こうなったら、教団同士で交渉して1つの結論を出さねばなりません。誰も素材トークンを入手できない代わりに被害を被らないか、誰か一人だけ素材トークンを入手できるか、です。いっけんこの2つを比べますと後者が選ばれることはないように思えますが、そのための仕掛けが用意されています。

 

 ポイントは、このどちらかに合意できなかった場合は、争いが発生して両者ともにカルト・パワーを失ってしまうことです。ですのでたとえば、片方のプレイヤーの残りカルト・パワーが1でもう一人のプレイヤーのカルト・パワーが2以上あった場合は、後者はとても強気に出られるわけです。

 

 そして本ゲームをもう一段階面白くするのは、"外部ロケーション"の存在です。"外部ロケーション"は7番目のロケーションで、4種類の中からゲーム開始時にそれを使用するか選択します。

 

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 "外部ロケーション"他のロケーションと同じく素材トークンが用意されていますので、1人で独占できれば勝利に近づきます。なおかつ、"外部ロケーション"には"落とし仔"コマを行かせることができませんので、ある意味安全です。

 

 また、"外部ロケーション"へはどこからでも移動可能で、かつ"外部ロケーション"から帰ってくる場合も任意のロケーションを選択できますので、他プレイヤーの"落とし仔"のターゲットになった場合に避難場所としても活用できます。

 

 ただし、"外部ロケーション"へ行ったプレイヤーはそのターン"落とし仔"コマを使用できませんので、他プレイヤーの脱落を狙っている場合は、行きにくいかもしれません。

 

 さらに"外部ロケーション"には、普通のロケーションにはない特殊効果が備わっています。たとえば"夢次元"の場合、カルト・パワーを得ることができますし、"失われし都"の場合は、逆にカルト・パワーを失うことになる、などなど。ですので使用する"外部ロケーション"によってゲームの展開がガラリと変わるところも楽しいところです。

 

 本ゲームはプレイヤーができることはとてもシンプルなのですが、毎ターンそれなりに悩める作品です。特に参加者が多いとあちこちでバッティングが生じて、カルト・パワーがどんどん減っていきます。また、獲得した素材トークンは自分の前に表向きで並べますので、集めた素材の数にリーチがかかると目をつけられて、ますます厳しくなる仕組みです。

 

 ゲームは短時間で終わりますが、行動の読み合いと交渉がメインになりますので、同じくらいの技量のプレイヤー同士で遊ぶとより盛り上がるでしょう。

 

© 2014 IELLO USA LLC.IELLO and its logo are trademarks of IELLO USA LLC.

© 2014 SUPERLUDE, NIGHT OF GRAND OCTOPUS, and their logos are trademarks of SUPERLUDE.

 

●URL

あなたに朝は訪れない『グランオクトパスの夜』 | ホビージャパンゲームブログ(日本語ルール翻訳元ホビージャパンのページ)

http://hobbyjapan.co.jp/game/?p=9459

 

(橋本 崇史)