攻撃されることが不利にも有利にもなるカードゲーム『アブルクセン』

　今回紹介するのはカードゲーム『アブルクセン』。一風変わったルールで奥の深い作品で、2人から5人で遊べます。

　プレイヤーは、なるべく多くのカードを自分の場に並べていきます。"攻撃"すると対戦相手の場札を自分の手札にすることができますが、最後まで残った手札はマイナス得点になってしまいます。ゲーム終了時に、もっとも得点を稼いだプレイヤーの勝利です。

　使用するのは1から13の書かれたカードが各8枚ずつと、ジョーカーカードが5枚。これらのカードをすべてよく混ぜて、各プレイヤーに13枚ずつ配ったのち残りを山札とし、共通の場に山札から6枚のカードをめくって並べたら準備完了です。

　プレイヤーが手番でできることは、手札から1枚もしくは複数枚のカードを表向きに自分の場に出すだけ。複数枚のカードを出す場合は、すべて同じ数字でなければなりません。自分の場に出したカードは、カードに書かれた数字と枚数が対戦者にも分かるように、重ねて並べていきます。

重ねて並べた図。もっとも新しく出したカードは、一番前に置く。この場合は8

　カードを場に出したら、各対戦者の場にあるカードのうち、一番新しく置かれたカードと、いま自分が出したカードを比べます。そして、カードの枚数が同じでかつ、自分のカードの数字が対戦相手よりも大きい場合は、"攻撃"が必ず発生します。

大きい数字のほうがより強く13が最大。またジョーカーカードは、単独で出した場合は13よりも強い。他の数字とセットで出した場合は、その数字と同じとみなす

自分のカードが2枚の10の場合、右側の7のカードに対しては攻撃が発生する。ただし、左の12のカードは相手の方が数字が大きいため、中央の4のカードはカード枚数が異なるために攻撃は発生しない

　攻撃が発生した場合、攻撃側の手番プレイヤーはまず、攻撃した相手の一番新しく置かれたカード（つまり攻撃判定の対象になったカード）を獲得するか否かを選択します。獲得することにした場合、相手のカードは手番プレイヤーの手札になります。そして攻撃されたプレイヤーは、いま失ったカードと同じ枚数だけ、共通の場もしくは山札からカードを補充し、手札に加えます。

　攻撃側の手番プレイヤーが相手のカードを獲得しない場合は、今度は攻撃された側に選択肢が生まれます。攻撃されたカードをすべて手札に戻すか、攻撃されたカードを捨て札にした上で、同じ枚数だけ共通の場もしくは山札からカードを補充し、手札に加えるかです。

　これを繰り返していき、誰かの手札がなくなるなどの条件を満たしたらゲームは終了で、その時点で自分の場に出していたカードの枚数から、残った手札の枚数を引いた数が得点になります。

　ポイントは、攻撃はメリットにもなりデメリットにもなることです。攻撃した場合、相手の場札を確実に減らし、かつ相手の手札を増やしますので、相手の点数を減らすことになります。ただし攻撃された側が、攻撃されたカードを捨て札にして共通の場からより強いカードなどを補充した場合は、長い目で見ると有利になり得ます。

2のカードが攻撃されて、相手はいらないといってきた。そのため、2のカードを捨て札にして共通の場から7のカードを補充した。その結果、手札には7が3枚になった。2よりは7のほうが大きいので強いカードであり、かつ一度に多くのカードを出せば攻撃されにくいので、7が2枚よりも3枚のほうがいい手札だといえる

　したがって、序盤に共通の場に大きい数字が並んでいる場合などは、わざと弱いカードを1枚出して攻撃されることを期待します。ですが考えることは皆同じで、攻撃しないように次々と弱いカードが場に出されていき、弱い数字ばかりが各自の前に並ぶことになります。

　そうなると逆に、攻撃のチャンスが生まれる場合があります。少し強いカードを出すと一度に多人数へ攻撃できた上で、同じ数字のカードを複数枚まとめて獲得できるかもしれないのです。つまり大ざっぱにまとめると、攻撃されることで1枚の強いカードを手に入れる場合と、攻撃することで複数枚の弱いカードを手に入れる場合の、どちらがより有利に展開できるのかに悩むわけです。

　ポイントは、同じ数字のカードを複数枚出すタイミングです。一度に多くの枚数のカードを出すと、攻撃されにくくなる上に手札をいっぺんに減らせるので狙いたいのですが、問題は多く出したカードが攻撃されて、相手に持っていかれた時です。

　たとえば、2のカード5枚セットが攻撃されて持っていかれたとしましょう。その場合は、共通の場もしくは山札から、合計で5枚になるよう手札を補充しなければなりません。すると最悪の場合、バラバラの数字のカードが5枚手札に加わることがありえます。その結果どうなるかといいますと、入手した5枚のカードを場に出すために5回の手番が必要になってしまうのです。一方、2のカード5枚セットを持っていった相手は、1手番使うだけで5枚のカードを場に出せますのであまり痛くないわけです。

　といいましても、本ゲームは終わるときはあっさり終わりますので、調子に乗って攻撃して手札を増やしていますと、出し終える前にゲーム終了になって大きくマイナスになりますのでご注意ください。

　本ゲームは、攻撃に関する処理が独特ですので最初は戸惑うかもしれませんが、ルール自体はそんなに複雑ではありませんので、ルールブックの最後にあるチェック表を参考にしながら数回試してみるとすんなりゲームに入れるでしょう。

　使用するカードの種類はトランプとほぼ同じで、わかりにくい特殊効果を備えたものもありません。ですので、いったんルールを覚えてしまえばプレイ自体は簡単です。しかし、勝つためにどうしようかと考えだしますと、複数の選択肢とジレンマが適度に頭を悩ませてくれるところが楽しい作品です。

　戦略と記憶力と駆け引きと運の要素が絶妙に絡み合って、手軽にもかかわらず遊びがいのある作品になっていますので、いろいろな人にオススメできる作品です。

●URL

アブルクセン（日本語ルール翻訳元メビウス ゲームズのページ）

http://www.mobius-games.co.jp/Ravensburger/Abluxxen.html

（橋本 崇史）