ボードゲーム・エントランス

ボードゲームやカードゲームを中心としたアナログゲームを紹介しています。なお、2016年1月28日以前の記事は、株式会社インプレスが運営していた“ゆるこいぶろぐ”に掲載していた記事を、許諾を得て転載したものです。

違う情報元から異なった推理が展開されるカードゲーム『藪の中』

 今回紹介するのはカードゲーム『藪の中』。限られた情報と対戦相手の行動から犯人を推理する作品で、3人から4人で遊べます。

 

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 プレイヤーは殺人事件の目撃者となり、3人の容疑者の中から犯人を推理します。犯人当ては数回行われ、無実の人を犯人だと間違えて推理してしまった回数が一定数を超えたプレイヤーの敗北となります。

 

 ゲーム開始時に、プレイヤーは"この人が犯人ですチップ(以下、チップ)"を1色5枚受け取ります。このチップは、犯人だと推理した容疑者に対して使用し、手持ちからすべてなくなると敗北します。

 

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 ゲームで主に使用するのは、人型の容疑者カード8枚。カードの表側には2から8の数字が書かれていますが、1枚は白紙です。

 

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3人で遊ぶ際は2の書かれたカードは使用しない

 

 最初に、使用するカードを裏向きにして混ぜたあと、各プレイヤーに1枚ずつ配り、残りの4枚を倒れている被害者1人とその容疑者3人という形で伏せて並べます。

 

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 その後プレイヤーは、自分のカードに書かれている数字をこっそり確認したあと、カードを右側のプレイヤーに渡します。そして自分は左側のプレイヤーから受け取ったカードの数字をこっそり確認して、準備完了です。

 

 一番手のプレイヤーは、まず3人いる容疑者の中から2枚を選び、書かれている数字を自分だけ確認してからもとの場所に戻します。こうして、最初の2枚プラス容疑者の2枚の合計4枚の情報をもとに、犯人と思しき人物を推理してその容疑者に対してチップを置きます。

 

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 なお犯人は、容疑者のうちもっとも大きな数字が書かれている人物です。ただし、白紙のカードは犯人にはなりません。

 

 二番手以降のプレイヤーが、既にチップが置かれている容疑者を犯人と推理した場合は、置いてあるチップの上に自分のチップを重ねて置きます。すべてのプレイヤーがチップを置いたら容疑者カードを表側にして答え合わせです。

 

 見事犯人を当てたプレイヤーは、自分の置いたチップを手元に回収します。一方、推理を外したプレイヤーにはチップは返ってきません。それだけでなく、推理が外れたチップの山の一番上に置いたプレイヤー(つまり一番最後に置いたプレイヤー)は、その山のチップをすべて裏にした形で受け取らなければなりません。

 

 その後、一番手を左のプレイヤーに変更してから再度推理を開始します。

 

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この場合、7のカードは犯人ではなかったので、橙色のチップを置いたプレイヤーが2枚のチップを裏向きにして受け取る

 

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裏向きになったチップを5枚以上集めると敗北する

 

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もしくは、手持ちの表向きのチップが1枚もなくなったら敗北する

 

 ポイントは、本ゲームが本領を発揮し出すのは2番手以降の手番からということです。一番手のプレイヤーは容疑者カードを見る際に、見ないことにした容疑者へ"見なかったマーカー"を置きます。その後チップも置きますので、二番手のプレイヤーは、2つの情報が追加された状態で手番が回ってきます。

 

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上に置かれたのが"見なかったマーカー"で、下に置かれたのが"この人が犯人ですチップ"

 

 その上で、二番手のプレイヤーは2枚の容疑者カードを見ることができるのですが、選べるのは、一番手がチップを置かなかった容疑者2枚だけなのです。つまり最も参考になるはずの、前のプレイヤーが犯人だと推理したカードを見ることができないのです。

 

 そして場合によっては、二番手のプレイヤーが見るカードと一番手のプレイヤーが見るカードが1枚異なることがあります。その結果、二番手のプレイヤーが推理する犯人と一番手が推理した犯人が異なってしまい、二番手が大いに頭を悩ます展開になることもしばしばです。

 

 さらに、悩んだ末に二番手が一番手と異なる容疑者を犯人だと推理しますと、三番手以降のプレイヤーがさらに悩んでしまう、という展開になるのです。

 

 このように、手番があとになればなるほど、前のプレイヤーがどこにチップを置いたのかという情報がヒントになるのですが、同時に判断を迷わす元ともなりうるところが面白いです。

 

 大抵の場合、各自が犯人だろうと推理した理由は、得た情報だけを考えると納得のいくものなのですが、それぞれが得た情報が微妙に異なりますので、判断結果も異なる場合があるのです。この状況はまさに、本ゲームの発想元である芥川龍之介の『藪の中』だといえるでしょう。

 

 さらに状況を混乱させるのは、5のカードです。容疑者の中に5のカードがあった場合、犯人は最も大きな数字ではなく最も小さい数字のカードになるのです。

 

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この場合は、8ではなく2が犯人

 

 ですので、何らかの形で5のカードを見ることができれば重要なヒントとなりますし、逆に見ることができなかった場合は、ほかのプレイヤーの選択などを含めて深読みした上で間違った選択をしてしまう、などということにもなります。

 

 本ゲームはシンプルに思える3択の数字当てですが、情報の一部だけを提供・共有することで、とても悩ましい推理ゲームになっています。といっても推理ゲームとしては手軽で、かつ運の要素もある程度含まれていますので、ガチガチの推理ゲームというわけではありません。

 

 個人的には、きちんと推理したはずなのになぜほかのプレイヤーと予想が食い違うのだろう、と頭を悩ませた挙句、答え合わせをして腑に落ちるという流れが楽しいです。ですのでゲームに慣れてきましたら、手番でわざとウソの選択をしてほかのプレイヤーを混乱させた上に罠にかけてみたり、さらなる混乱を生む上級ルールを導入したりして、どんどん悩ましくするとより楽しめるでしょう。

 

●URL

藪の中 - Oink Games

http://oinkgms.com/?pid=37431901

Oink Games

http://oinkgms.com/

 

(橋本 崇史)